木曜22時に放送されていたドラマ『コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』が、9月11日で最終回となった。2007年7月に全国配備を目指す特措法(救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法)が成立するなど近年必要性が叫ばれているドクターヘリをテーマにしたもの。救命救急センターを舞台に、若きフライトドクターや指導医たち、それにドクターヘリに携わる人々の奮闘と葛藤を描いている。
http://wwwz.fujitv.co.jp/codeblue/index.html
『この国には、もっと救える命がある。』
ヘリコプター救急についての有用性は以前から確認されていたが、日本で特に注目され始めたのは1995年の阪神淡路大震災からである。 その当時、日本は消防、警察、海上保安庁を含む民間機だけで約1000機のヘリコプターを保有していた(アメリカ、カナダに次ぐ世界第3位の保有機数)。しかし、最初の3日間でヘリコプターによって搬出された人はたったの17人で、約6400人の犠牲者のうち5000人近い人々が現場で救出も救護も受けることなく亡くなっている。この大失態に日本のヘリコプター救急に対して、世界中から非難が浴びせられた。
この反省をもとに、日本政府もようやく動き出し、1999年に内閣府に「ドクターヘリ調査検討委員会」が設置され、2001年よりドクターヘリ導入促進事業がスタートしたのである。 この時、厚生省は5年間で30ヵ所のドクターヘリを配備する目標を掲げたが、実際には14ヵ所での運用にとどまっている。
最大の問題は、年間2億円の運航費用の負担であり、昨今の地方自治体の財政事情で導入を躊躇しているところが多い。また基地病院内や病院間の連携、医師の確保、乗員の養成システム、ヘリポートの不足、運用時間、着陸場所の確保などといった解決しなければならない課題が多い。
『世界の救急ヘリコプター』
世界主要国のドクターヘリ(救急ヘリコプター)は、原則として半径50km、15分を基準として配備されている。日本の配備数を世界の主要国とヘリコプター1拠点あたりの人口で比較してみると、アメリカ:約46万人、イギリス:約232万人、イタリア:約122万人、ドイツ:約106万人、オーストリア:約22万人、スイス:約50万人、日本:約1162万となり、さらにそれぞれの配備密度でいうと、アメリカ:0.5、イギリス:0.7、イタリア:1.1、ドイツ:1.7、オーストリア:3.6、スイス:3.8、日本:0.2であり、その差は歴然である。
アルプス山岳国であるスイスやオーストラリアでは、救急医療において救急車は一部の地域でしか役に立たず、はじめからヘリコプターが必要であった。そのため高い配備密度が必要で、全国どこでも、山の上でも谷の上でも、15分以内に医師が駆けつける救急システムが出来上がった。つまり、険しい山岳国でありながら、救急に関する医療過疎がほぼ解消されたのである。
アメリカは配備密度でみると低い値であるが、人口面でみると国民の75%がヘリコプターの15分以内の保護下にある。アメリカのヘリコプターのもうひとつの特徴は、搭乗するフライトナースとパラメデックが高度な教育訓練を受けており、医師に近い技能と資格を有しているため、医師の同乗を必要としないことだ。
経費負担方式はどうなっているかというと、公的負担(フランス、オランダ、イタリア、ベルギー、ポルトガル、日本)、企業負担(オーストラリア、ニュージーランド、イギリス)、受益者負担(アメリカ、ドイツ、オーストリア)、会員負担(スイス)となっており、それぞれの国の状況に合った負担方式となっている。
『支えあう命』
日本のヘリコプター救急は先進国の中で、遅れをとっている事は間違いない。
運用に関しては、日本の場合には国と都道府県が折半して財政的負担をし、民間企業に業務委託してヘリコプターを救命救急センターに配備・運航する仕組みとなっている。このため、この都道府県負担が財政規模の小さい所ほど困難であり、ドクターヘリの配備を妨げている。ドクターヘリの配備が他にも増して必要だと思われる東北、北陸、山陰、四国の各地方には、未だ1機も配備されていない。このままでは財政規模の小さい県ほど後回しになり、救うべき命に地域格差が拡大するおそれがある。導入促進のためには、公的負担のみではなく、医療保険から補助するような仕組みや行政圏・県境を越えたドクターヘリの運航も考えるべきである。
ただ、ドクターヘリは非常に経済的負担が大きいとの先入観が強いが、全国に50ヵ所にドクターヘリを配備した場合に必要な年間費用(約100億円)は、現在全国で運用されている救急車搬送にかかる費用(約5600億円)のわずか1.8%であり、その有用性を考えた場合には決して高いものではない。
『Preventable deathを減らす』
交通事故などで大量出血した負傷者は30分で50%が死亡するとされる。救急医療はまさに時間との闘いなのだ。時と場所を選ばずに発生する重症患者に対して、いかに短時間で適切な初期治療を開始するかが、予後を大きく左右するのである。その意味で、救急医療に精通する医師を救急患者発生現場に迅速に搬送するシステム(現場活動型救急医療)は有用性が高く、機動性と迅速性に優れたドクターヘリは、傷病者発生から初期治療までの時間を大幅に短縮し、救急患者の良好な転帰の獲得に大きく貢献する。
2002年度ドクターヘリが対応した交通事故の負傷者474人の追跡調査をしたところ、もしドクターヘリがなかったと仮定した場合に比べて、死者は40%減、社会復帰できた人は1.6倍となった。
さらにドクターヘリの救命効果を上げるためには、ドクターヘリ要請までの時間を短縮する必要がある。欧米の先進国では、原則として救急電話を受けた時点でヘリコプターの必要の有無を判定することになっている。ヘリコプターは特別扱いする必要はなく、救急車などと同様に日常の救急システムの中に組み入れていかなかければならない。
『ドクターヘリと消防防災ヘリの違い』
ドクターヘリ導入計画が都道府県で頓挫するのが、「防災ヘリがあるからドクターヘリは要らない」、「ドクターヘリを運航する費用はない」というのが主な理由である。実際に、消防防災ヘリの出動件数をみると救急出動が増えてきており、広島・岐阜・高知・兵庫などでは消防防災ヘリを用いてドクターヘリ的運航が行われている。しかし、その運航にはやはり限界があり、その違いを理解しておく必要がある。
その違いは、主に①機体および装備、②ヘリコプター待機場所、③搭乗スタッフ、④出動体制が上げられる。それぞれに利点・欠点があり、それを理解した上で効果的な運航形態をとるべきである。
(例)ドクターヘリ:現場への医師派遣、現場からの患者搬送、
消防防災ヘリ:捜索、救助・救難、病院間搬送、離島・僻地の医療搬送
消防防災ヘリとドクターヘリの連携:離島・僻地、災害現場、山岳救助、洋上救助
地域によっては消防防災ヘリが病院に立ち寄って、医師をピックアップして現場に向かうような運用方法もみられるが、それではどうしても時間がかかってしまい、効果的な運用とはいえない。ドクターヘリの基本的な役割は、医師をいち早く現場へ送り届ける事であり、患者の搬送は二義的な目的である。現場で直ちに治療を行うことによって救命率が高まるのだ。
『今後の課題』
日本のドクターヘリ事情は依然として厳しいが、我が国に現存する医療資源を有効活用することによって、救命救急から僻地医療まで国民の幅広い救急医療ニーズに応えていかなければならない。
現在、消防防災ヘリは全国70機配備されており、我が国のヘリコプター救急においてその活用は必須である。限られたヘリコプターによって、全国における地域の安心・安全を確保するためには、ドクターヘリ、消防防災ヘリ、さらに海上保安庁、自衛隊、警察など他の行政機関のヘリコプターなどとも適切な連携活動を行っていく必要がある。
運航時間に関しても、ドクターヘリは日中のみの運航となっているが、夜間ドクターヘリの適応症例は昼間の2倍の症例があり、夜間のドクターヘリの運航が望まれる。アメリカやスイスでも夜間飛行は日常化しており、小雨や霧などの天候でも運航する。
しかし、ここで忘れてはいけないのが、「運航の安全」である。
2007年3月30日にあった徳之島自衛隊ヘリ墜落事故は忘れてはいけない。
http://chiezou.jp/word/徳之島自衛隊ヘリ墜è½äº‹æ•…
このような悲しい事故が二度と起きないよう、安全な運航体制の確保に全力を尽くしていかなければならない。夜間照明の設備、暗視装置の装備、計器飛行方式の設定など十分な準備が必要であり、ただやみくもに実施すべきではない。
その他、通信手段の確保、関係者の教育・指導、ヘリポートの確保、救急救命士の権限強化、メディカルコントロールの確立・強化などたくさんの課題が残されている。
特措法の制定に伴い、都道府県は医療計画の中に救急医療用ヘリコプターを組み込んで活用していかなければいけなくなり、今後ドクターヘリは都道府県そして日本における救急医療の要としての存在価値を高め、救急医療体制改革に大いに役立つものと思われる。
関連動画
コードブルー/HANABI
災害対策用ヘリコプター「あおぞら号」
関連書籍
ドクターヘリ導入と運用のガイドブック
ガイドラインドクターヘリ安全の手引き
HELI WORLD (ヘリワールド) 2008
命をつなげ!ドクターヘリ 日本医科大学千葉北総病院より
フライトナース
関連HP
救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net)
日本航空医療学会(第15回・日本航空医療学会総会)
MESHサポート(沖縄北部救急ヘリ)
医療法人財団 池友会 WHITE BIRD
第1混成団(緊急患者空輸について)
E&M研究所(宮崎県防災救急航空隊見学)
宮崎県防災・危機管理情報
宮崎県消防防災ヘリコプター
AAMS(Association of Air Medical Services)
2026年度 高校教員向け救急講習会のご紹介
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