2012年2月12日日曜日

脳低温療法

昨日は第39回宮崎救急医学会に参加してきた。
はじめての参加であったが、宮崎で救急を頑張っておられる先生方が集まり、発表毎に熱い議論が交わされていてとても驚かされた。
今回の特別講演は、山口県立総合医療センター院長 前川剛志先生で「軽度低体温療法(脳低温療法)の現状と課題」の講演だった。

<講演メモ>
・体温↑→梗塞サイズ↑(サイトカイン↑)IL-8(好中球誘導)・IL-6(CRPインデューサー)
・高血糖→神経学的予後悪い
・Ca蓄積→カルコール×
・グルタミン酸↑
・脳虚血再開通後にスーパーオキサイド↑→血管内皮がやられる
・SAH:NO(ラジカル)が脳脊髄液中で上がる。血中NOは2週間で下がる→spasmと関係ある!?
・脳低温療法時間:12~24時間(24時間やれば大丈夫)。
・心原性は虚血による潅流障害だけだが、頭部外傷は脳自体の障害あるので、脳低温療法でも厳しい。
・新生児仮死:低温療法有効。頭だけ冷やす。33-35℃。
・小児頭部外傷では脳低温療法をやったほうが予後が悪い!バックグラウンドの違い!?
・頭部外傷に対する脳低温療法については結論出ていない。変わらないかも!?高次脳機能は維持できるかも!?
・プロトコールを立てるときは最重症・軽症は省くほうが良い。
・鎮静(ミダゾラム)だけではダメ!→血糖↑
・必ず麻薬を使用する。麻薬は鎮痛だけでなく鎮静・シバリング中枢抑制作用もある。
・麻薬を使用してもシバリングが出るようなら筋弛緩薬を使用する。
・NLA法が良い。ドロレプタンはα遮断作用もあり、有効。
・脳低温療法:浮腫改善。代謝抑制。細胞内アシドーシス改善。細胞内Ca蓄積の抑制(32℃)・・・
・心係数は正常域を維持する。それを下回ると脳低温療法の益がさがる...
・温度測定は血液温がベスト!膀胱温でもよい。末梢温度も測るべき(ほんのり温かいくらい)。十分なvolumeと末梢をひろげる。
・カリウムは正常下限→復温時のVf予防。
・血小板→5万を切ったら輸血。
・輸液はサリンヘス・ヴィーンF・リンゲル液などの糖を含まないものを使用する。ヘスパンダーは糖を含むので×。4℃、1500-2000ml(30ml/kg)、30分で。
・脳低温療法中は頭蓋内圧は下がるはずなので、上がる時には何か異常が生じた可能性あり。
・WBCは様々。CRPは上がる(←IL-6↑)が、タンパクなので産生に半日〜1日かかる。
・呼吸抑制-人工呼吸器
・酸素乖離曲線左方移動-微小循環改善
・循環抑制-ドブタミン
・不整脈-リドカイン
・血管収縮-volume・末梢
・シバリング/アシドーシス-微小循環改善。メイロンは組織アシドーシスになる。細胞内pH↓。
・K/Mg/Pにも注意。
・凝固障害
・32℃にしても、volumeいれてafterloadをとれば心筋酸素消費量を減らせて、Vfにはならない!
・シバリングは熱産生につながるので、きちんと抑制しないとダメ!
・早期の冠動脈再開通治療すべき。PCPSしながらやるのが良い。
・目標:32-34℃。自信があれば32℃が良い。32℃の方がCa蓄積↓。
・脳低温療法はラジカル・スーパーオキサイドを抑制する。
・頭部外傷は低温にするまでに時間がかかる。2時間以内に下げることができれば、成績はもっとよくなるかも!?
・下大静脈内カテーテル冷却法。
・CHDF:heat exchagerは使える。サイトカイン除去については大きなものはとれる!?PMX-エンドトキシンだけでなく、核内蛋白・内因性麻薬も除去できる!?
・縊首・窒息系は成績よくない。静脈系が遮断されることにより、脳内微小出血がおこる。頭部外傷と同様に脳自体の障害がおこるため。低酸素血症→乳酸↑、CO2↑→組織pH↓。


心肺停止後ROSCに至った患者をただ助けるだけでなく、神経学的予後をいかに良くするかの戦略が必要だと改めて考えた。

2012年2月11日土曜日

消化管出血

2月7日、「地域医療の臨床課題を考える会」に参加した。今回のテーマは「消化管出血」。宮崎県の救急医療においてはとっても重要な課題。消化器内科不足の宮崎において、消化管出血の患者がでた場合に、時間内であれば対応できる病院もいくつかあるが、時間外・休日になると一大事である。特に県北においてはその問題は深刻だ。県病院にさえ消化器内科医がいないのだ。そのため、開業医と協力して輪番制をとらざるを得ない状況。。。
今回の講演会では、その問題の解決策を議論するまではなかったが、消化管出血自体を起こさないためにいかに「PPI」が有効であるかの話であった。
NSAIDやLDAが消化管出血のリスクであることは理解していたが、PPIとそれ以外の薬剤とのあまりの効果の違いには改めて驚かされた。
〈講演メモ〉
・救急の10%が消化器系疾患、70%が時間外
・LDAが癌の発症予防?
・LDAの出血はoozingの出血でも止まりにくい。oozingの出血は吐血せずに貧血が進行してから気付く。
・LDA:直接的粘膜障害強い。多発する。
・LDAとNSAIDの消化管出血のリスクは一緒。
・LDAで・・・心筋梗塞は555人に1人予防。脳卒中は106人に1人予防。消化管出血は248人に1人発症。
・アスピリンは低用量でも高用量でもリスクはあまり変わらない。
・腸溶剤でもリスク変わらない。
・クロピドグレルの出血性潰瘍の再発率は8.6%。LDA+PPIでは0.7%。
・抗血栓薬併用増えている→出血リスク↑↑
・抗凝固剤にPPIを足せば吐血は0%!?
・クロピドグレルとオメプラゾールの併用×→CYP2C19の酵素が使われてクロピドグレルの活性↓
・COX-2も胃粘膜防御に関与している!?微小循環障害に関与。
・ロキソニン27.6% vs セレコキシブ1.4%
・NSAIDで胃内pH↓ pH5以下になると胃粘膜障害起こす。
・坐薬も内服とリスク一緒。
・セレコキシブにPPI併用すれば発症0%にできる。
・NSAID/LDAはGERDも悪くする。小腸膜様狭窄・潰瘍も増やす。腸溶剤はさらにリスク↑
・小腸病変にはPPI効かない。ミソプロストール300μg/dayは効果あるが下痢・子宮収縮などの副作用に注意。セレコキシブなら小腸病変予防になる(vs NSAID+PPI)
・NSAID→大腸膜様狭窄・潰瘍。回盲弁・盲腸・上行など奥に多い!しかも多発!
・NSAID坐薬→直腸狭窄・潰瘍。
講演会後には懇親会があり、地元の医師会長や院長先生方と交流を持つことができた。こうした繋がりも救急の際にはとても重要であり、大切にしなければいけないと思う。
PPIの功罪をきちんと見極め、消化管出血の予防に努め、それでも消化管出血患者がでた場合には適切な内視鏡止血を行っていきたい。